セールスDXを推進する組織マネジメントの4原則

セールスDXを推進する上では、組織マネジメントの在り方も非常に重要です。今回は営業現場でよく見られる人材が育たないマネジメントの代表例を紹介した上で、セールスDXを推進する上で必要なマネジメントの4原則をお伝えします。

営業組織がDXを推進する必要性とは?

DX推進の必要性について理解を深める上では、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発行する『DX白書2023年』が参考になります。

DXには大きく二つの要素があり、一つ目の要素「D」デジタル化は危機意識と共にその推進が進みつつあります。二つの目の要素「X」つまりトランスフォーメーションは残念ながら、まだまだその意味からして理解されていない現状があります。X=トランスフォーメーションとは、その組織の文化が変わることであり、ビジネスの在り方を含めた経営の問題であり、デジタルはその経営変革の重要なリソースでしかない。

参考:『DX白書2023』https://www.ipa.go.jp/files/000108044.pdf

そして、DXを進めていく上で必要なアプローチとして同白書では、「顧客や社会の問題の発見と解決による新たな価値の創出」と「組織内の業務生産性向上や働き方の変革」を同時並列に進めることを挙げています。

市場環境や企業を取り巻く環境はデジタル化が進み、営業組織においてもそれに対応する形で変革していく必要があり、組織文化から変革していかなければならないということが読み取れます。セールスDXとは、データやITツール等のデジタル技術を駆使し、顧客ニーズを的確につかみ、自社の営業戦略に反映し、営業プロセスや営業組織を構築することです。

セールスDXを推進することが、企業の競争力と経営体力を高め、環境変化にも対応することに繋がります。

セールスDX組織の人材が育たないマネジメント、3つの種類

日本の営業現場にいると次のような会話を耳にします。

「売上目標をいつまでに達成するのか?」

「今日は架電100件実施できたか?」

「気合と根性が足りない」

これでは「スキル開発」が組み込まれていないマネジメントのため人材が育ちません。人が育ちにくい営業組織のマネジメントを整理すると、次のようなケースです。

  1. 「売上ノルマ」などの結果のみのマネジメント
  2. 「架電100件」などのタスクのみのマネジメント
  3. 「気合と根性」のようなメンタル面だけのマネジメント

セールス組織においてもフィードバックの種類から、「人への投資」に注力しているかどうかが分かります。フィードバックの観点を3つに分類すると以下のように整理できます。

  • タスク遂行
  • メンタル
  • トレーニング・教育

3番目のスキルを伸ばす「教育・トレーニング」がおざなりになってしまっている営業組織のマネジメントは人材が成長しない、レベルが低いマネジメントと言い換えることができます。

DX組織におけるマネジメント4つの原則

DXを推進する上で1番重要なポイントは、業務マネジメントでもメンタルマネジメントでもなく、「スキルマネジメント」にあります。マネージャーはとにかく、スキルの育成に力を入れなければなりません。以下では、DX組織におけるマネジメントの4原則をお伝えします。

原則1:とにかくスキルを身につけさせる

DX組織において、スキルのデジタルツール活用が必須になります。そして、ツールを活用するなかで、メンバーはできなかったことができるようになるということを実感します。スキルのトレーニングを通じて、マネージャーとメンバーの信頼関係を構築していきましょう。

原則2:数字の見方を教える

数字の見方の中でも「相関と因果の違い」を伝えることが成長には効果的です。では、なぜ相関と因果で分けて考えなければならないのか。それは、因果関係にはある種、答えがないため、因果関係の答えを導くために多くの勉強が必要になります。

ステップ1としてはまず相関と因果関係の違いを徹底して考えてもらい、ステップ2として因果関係をきちんと考えてもらう癖をつけてもらうことが重要です。

原則3:データの活用とフィードバック

セールスDXは、ボトルネックを定量的に把握して改善する組織です。データを用いてフィードバックをしましょう。例えばあるメンバーの売り上げが芳しくない場合、結果が出ない理由をデータを示しながらフィードバックするのです。フィードバックの根拠となるデータはマネージャーが提示しましょう。

原則4:マイクロマネジメントを実施

4つ目が、マイクロマネジメントです。結果ではなく、プロセスに対するマイクロマネジメントです。マイクロマネジメントは、「監視されている」ではなく、「見守ってもらっている」という風に思ってもらえることが大事です。色々細かく見てもらえて嬉しいと思ってもらえる関係性の構築が前提として重要です。そのためにも原則1〜3で示したように、仕事をするなかで成長を実感する、仕事の意思決定の仕方がわかる、フィードバックに根拠があるといった積み重ねが重要になります。

煙たがられない「マイクロマネジメント」のコツ

「マイクロマネジメント」と聞くと窮屈なイメージを抱くかたもいるでしょう。しかしながら、結果ではなく「プロセスにおける細かいフィードバック」を実施し、ちゃんと見てくれているという印象を持ってもらうことが重要です。

例えば、「話し方」や「仮説の立て方」をフィードバックする場合、「なぜ、さっきのシーンでこういう話をしたのか?」という問いかけを実施して、「あの場合、お客様の発言から関心があるのは別のことだと判断できるから、先に認識の齟齬が無いか確認して話を進められると良かったね」といった形で、気づいたら、都度フィードバックします。

GLナビゲーションでは、画面遷移やショートカットキーの使い方、ウィンドウの配置まで細かくフィードバックします。自分の行動量に変化が、どのように数字に影響を与えるかを実感してもらえるように繋がりを意識してフィードバックします。普段の小さなことやちょっとしたことを変えることがどれだけ重要なのかについても、実感してもらえるようになります。

「マネジメントを受けた人」がマネージャーになりやすい

マネジメントを受けた社員はマネジャーの素質が身につきやすいです。マイクロマネジメントされたメンバーは同じことをメンバーに実施することができ、支配ではなく見守り型の感覚を持っているのでコミュニケーションを間違うこともありません。自身の成長過程がそのまま資産として将来の自分のキャリアに直結します。いわゆる「人的資本」の構築にも役立つといえます。

他人からのフィードバックを受け止めて、改善できる人が結果に繋がります。フィードバックは強制ではないため、組織づくりや採用において、「ポジティブに受け止められる人物かどうか」を見極めることも重要になります。

「量」を意識させるのは間違いなのか?

データドリブンな取り組みは必ず数字に基づいた仮説検証になってくるため、結局その数がそもそも少ないと検証できることが少なくなります。そのため、「量を意識してもらう」ことが非常に重要です。量をこなすことで検証や検証の確度が向上していく重要性を教えていきましょう。

GLナビゲーションが辿ったセールスDX組織への3ステップ

GLナビゲーションは1年半で3つのステップにわけてセールスDXの組織への変革をしました。

1st:テクノロジー導入による業務効率の大幅向上

マーケティングオートメーションのMarketoやTrello、Slackといった複数のツールの導入と、ツール間連携を行うことによって、人がやらなくて良い領域を可能な限りテクノロジーで自動化し、人的なリソースを時間価値が高い領域に集中させる体制が整いました。テクノロジー導入により、営業1人あたりの活動量が1ヵ月で約4倍に向上しました。

2nd:データドリブンで営業戦略を立てることが可能に

結果から言うと、営業1人あたりの売上が2倍に向上しています。ずっと営業担当者の勘と経験に頼ったアナログな営業活動をしていたのですが、しっかりとデータを基軸としたボトルネックの整理や解消に向けた打ち手の考案、実行の意思決定を行うことで短期間で売上が増加しました。

3rd:属人性の少ないスケーラビリティのある営業組織へ

リード獲得からクロージングまでの全体プロセスや各企業の属性別に担当を明確に分けることを行いました。例えば『The Model』式の組織体制を導入し、インサイドセールスと営業で明確に役割分担をしています。また、顧客の属性に合わせてTier1からTier3という優先度を設定し、Tier1には営業リソースを優先的に割いて、Tier3以降はできるだけ人のリソースを割かずにテクノロジーを活用して案件化する仕組みを構築しています。これによって、少ない人数でもスケーラビリティのあるレバレッジの効いた営業体制の構築が可能になりました。

まとめ:マネージャーはメンバーの仮説検証の良き伴走者

まずスキルを習得させ、数字の見方を教え、数字に基づきフィードバックを実施することがセールスDXのマネジメントには求められます。

「〇〇さんは他の人に比べてここの部分の数字が低くて、恐らく問題はここにありそう。

なぜかというと、こういう行動をしてるからだと思う。こういう風に変えたら、もしかしたら数値が上がるかもしれないから試してみよう」

このようなフィードバックを通じて仮説検証や行動の「良き伴走者」になることがマネージャーに求められています。

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