事業承継M&Aを検討する企業経営者に知ってほしい「DX」の隠れたメリット

少子高齢化を背景として、事業承継に伴う国内企業のM&Aが増加しています。しかし、急激なM&A案件の増加によって、見極め不足による買収企業とのトラブルや「良いM&A先が現れない」といった悩みもあるようです。

そこで今回は、事業承継を検討している企業にぜひ導入してほしいDXのメリットを解説します。

2025年には70歳を超える経営者が約245万人!うち約半数は後継者未定

経営者の高齢化に伴い、国内の企業は事業承継が大きな問題となっています。中小企業庁が発表したデータによると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人となっており、約半数は後継者が未定とされています。

中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/hikitugigl/2019/191107hikitugigl03_1.pdf

事業承継には、大きく分けて3つのパターンがあります。1つ目は他企業への「M&A」、2つ目は子供や親族に承継させる「親族内承継」、3つ目はMBO(Management Buyout)という形で役員や従業員などに承継する「従業員承継」です。中小企業庁が発表した別のデータでは、親族内承継が減少しているのに対して、内部昇格やM&Aによる経営者の就任が増加傾向となっています(P13)。

中小企業庁「事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について」

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shokei_ma/001/005.pdf

こうした背景から、事業承継型のM&Aを実施する企業とともに、仲介を行う民間のM&A専門機関も増加しています。2014年度はわずか260件だった民間M&A支援機関による中小企業のM&A実施件数は、2022年度には4,036件にまで増加しています(P12)。

事業承継型M&Aにはトラブルや詐欺、低い価格設定などのリスクが伴う

一般的に上場企業は、株式市場で投資家からの評価を得るために、継続的な成長が求められます。成長性を判断するための一定の基準として、「年間売上成長率30%」という指標がありますが、売上を3割も引き上げるような新規事業を作るのは容易なことではありません。そこで、上場企業は継続的な成長を実現するための手段として、M&Aという選択肢を検討することになります。

従来のM&Aでは、自社にない成長領域に携わる企業を買収するというケースが見られましたが、最近では自社の下請けや競合企業を買収して成長するというケースも増えています。そのため、事業継承を考えている企業にとって上場企業への売却は実行しやすい状況になっています。

しかし、実際の事業承継M&Aの現場では、上場企業が中小企業を買収するケースはそれほど多くはありません。近年増えているのは中小企業同士のM&Aで、経営層の高齢化に伴い慣れないM&Aを実行したためにトラブルや詐欺に遭うケースも増加しています。

実際に、今年の8月に中小企業庁からM&Aに関するトラブルへの注意喚起がされました。

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2024/240830_01.html

こうしたトラブルの他にも、企業価値に見合わない低価格でM&Aを実行してしまったというケースもあります。上場企業のM&Aの多くは、事業の将来価値を算出して現在の価値に割り引く「ディスカウントキャッシュフロー方式(DCF法)」や、上場している類似企業の時価総額を算出して評価額を決める方法が一般的ですが、近年増えている中小企業のM&Aでは、「純資産+営業利益×2」といったシンプルな算出ロジックを使用しているケースも多いようです。

この計算方法だと、例えば売上10億円の企業で、純資産1億円と営業利益が3%だとすると、「純資産1億円+営業利益3000万円×2=1億6000万円」という価格になります。将来価値が考慮されず、純資産と直近の営業利益だけで算出するので、上場企業で用いられている方法に比べると、評価額が低くなる傾向があります。算出方法や企業によっては、評価額が5~10倍ほど変わる可能性も十分にあるでしょう。

では、なぜ企業価値を大幅に下回る価格でM&Aが実行されてしまうのでしょうか。その要因のひとつに、仲介事業者が成功報酬型のビジネスモデルを採用していることが挙げられます。成功報酬型であれば、「できるだけ高く売ってもらえるのでは」と期待してしまいますが、仲介事業者が一番避けたいのは「契約が成立しないこと」です。手間をかけて将来価値を算出し高い値段をつけたとしても、買い手が見つからなかったら報酬は入りません。また、中小企業同士のM&Aの場合は買い手側も原資が潤沢にあるわけではないので、買い手が見つかりやすい手頃な価格を設定して早く売却しようとする動きになります。さらに事業承継の場合は、経営者の高齢化が原因であることが多いので、「早く売却先を決めたい」と考える売り手側の心理も影響するでしょう。

事業承継を検討している企業が、社内のDXから着手すべき理由

事業承継を考えている企業がやるべきなのは、よく分からないまま焦ってM&Aを進めることではなく、上場企業に高く買ってもらえる企業に変革することです。しかし、中小企業の多くは上場企業とM&Aを実現できない2つの問題を抱えています。

まず1つ目は、「内部統制が上場企業に対応できていない」という問題です。中小企業の多くは上場企業のように社内のルールや仕組みが整備されておらず、業務や報告のプロセスが明らかになっていないという課題があります。内部統制が適切に行われていない企業はリスクが大きいため、上場企業は買収することができません。

2つ目は、「売上の再現性が低い」という問題です。「代表にカリスマ性がある」「経営陣の人脈に頼っている」など、属人的な経営に依存している場合、キーマンがいなくなった途端に事業が立ち行かなくなる可能性があります。こうしたリスクを乗り越えてでも、中小企業を買収したいと考える上場企業は少ないでしょう。

この2つの問題を解決し、上場企業とのM&Aを実現する可能性を高めるために、「管理部門のDX」が有効に働きます。内部統制を含めた管理部門にDXツールを導入・運用することで、社内の属人性を排除しデジタル化を図ることができるでしょう。

なお、金融庁が発表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/kijun/20230407_naibutousei_kansa.pdf)」では、内部統制の基本的な要素として以下6つを挙げています。

  • 統制環境
  • リスクの評価と対応
  • 統制活動
  • 情報と伝達
  • モニタリング
  • ITへの対応

これらの要素を満たすために、DXは欠かせません。意思決定のプロセスや履歴をデータとして残してモニタリングすることで、適切な意思決定が実現できるでしょう。

社内をDXすることは、有利な条件でM&Aを進めやすくなるという観点以外にも隠れたメリットがあります。DXによって従業員のリスキリングが行われ、デジタル人材を育成できるという効果があります。M&Aを実行した企業では、経営の合理化のために従業員の早期退職を促すケースもありますが、デジタル人材を育成すれば買収後も評価される可能性が高くなるでしょうし、転職市場でのニーズが高いので、仮に早期退職の対象になったとしても、リスタートがしやすいと言えます。さらに言うと、内部統制を徹底して属人化を排除した場合、組織の透明性や生産性が改善されるため、利益率や売上が上がりM&A自体が不要になるかもしれません。管理部門のDXは、そのくらい企業経営に大きなインパクトを与える変革です。

中小企業が社内のDXを進めるためのポイント

事業承継や自社に有利なM&Aのために、社内のDXに興味を持ってはいるものの、「社内にITに長けているシステムの専門家がいない」と悩んでいる経営層の方もいるかもしれません。しかし、社内のDXはそれほど難しい変革ではありません。参考までに、GLナビゲーションでは新卒1年目の若手社員でもツールの内製化を実現し、IT知識の浅いメンバーが社内の業務改革を進めて4年間で売り上げが16倍に成長しています。

中小企業がいきなりデジタルツールを内製することにハードルがあると考える方もいるかもしれませんが、グローバルスタンダードのツールの多くはノーコードでコーディングの必要がありません。業務側の知識は必要ですが、システムの知識がなくてもツールの構築は可能です。そのためにも、DXのためのツール選定では、マーケットに受け入れられているグローバルスタンダードの製品を選びましょう。中小企業だとコスト面を重視して中小企業向けの安価なツールを選ぶ傾向がありますが、できる限り上場企業が多く扱っているツールを選ぶことで、従業員のスキルアップを図ることができます。また、ツール構築をベンダーに依頼すると、コストがかかる上に社内にナレッジが蓄積せず、デジタル人材の育成も進みません。ツールの構築や運用は、自社で内製することを意識すると良いでしょう。もし導入に不安がある場合は、ぜひGLナビゲーションにご相談ください。DXコンサルティングを得意領域としており、ツール構築のサポートや人材育成のアドバイスも可能です。

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