事業承継を考える企業にとって「DX推進」への投資が極めて重要な理由

後継者不足は経営者にとって、頭を悩ませる大きな問題です。経営者の選択肢の一つとして、M&A(合併買収)で解決を目指すケースも見られます。事業承継やM&Aを考える経営者が「DX推進」に向けて投資をすべき理由を紹介します。

事業承継に向けてDX推進をする3つのメリット

事業承継に向けてDXを推進するメリットは3つあります。1つ目は、事業承継ができなかったとしても、社内にそのまま引き渡す選択肢が取りやすくなります。2つ目は、社員のモチベーションアップやキャリアアップに繋がります。3つ目が一番大きなメリットですが、分かりやすく企業価値が高まり、会社のバリュー(売値)が上がります。

属人的な経営だと事業承継が難しい理由

多くの中小企業は、優秀な経営者が属人的な経営で切り盛りをしているため、次の社長に継承できない状況になっています。つまり先代社長がいないと会社運営を継続することが難しくなります。その理由は次の2つです。

売上の再現性が立てづらい

1つ目は、売上の再現性が立てづらい点にあります。社長個人の関係性に紐づいて売上が構築されているため、社長がいなくなると売上が立たなくなってしまいます。そのため、誰かに社長をバトンタッチしようと思ってもその社長がいなくなると会社が存続できません。営業のDX化を進めることで、「誰でも売り上げを立てられる」状況を作ることが期待できます。

財務部門における意思決定がノウハウ化されていない

2つ目は、財務部門における意思決定がノウハウ化されていない点にあります。コスト削減や予算投資のポイントが全て社長の頭の中に入っている状況では、予算を決める判断軸を他の人が持てません。こういった領域についてもDX化を進めることで、投資回収に対する考え方や管理会計などの予実管理に対する考え方を社内に取り込むことができ、経営の見える化・オープン化が進みやすくなります。それによって、社員一人ひとりの会計に対する意識も高めることができます。

DX推進が社員のモチベーションアップやキャリアアップに繋がる

多くの中小企業は、極めて属人的な仕事をしていることが多いです。こういった仕事の進め方は、キャリアにおいて非常に足かせになってしまい、社員の市場価値が上がりません。その結果、モチベーションの低下やモラルハザードが起こりやすい原因になってしまいます。DX化を進め、最先端のツールを活用できることは社員のキャリアアップにも繋がり、能力開発にも繋がります。当然、会社の生産性向上にも繋がります。

次のメリットで紹介するM&A時の評価にも繋がってきます。つまり、デジタルに対するリテラシーの高い人材が集まっているということは、会社に対する高い評価を生み出すことにも繋がります。そして買収後も社員がM&Aされた会社で活躍することができます。

DX推進で会社の売却価格が上がる理由

大企業や上場企業の多くは成長戦略を描く上でM&Aを検討しており、売上がある程度あればレガシーな事業でも売上を上げるために買いたいと考えています。

中小企業の多くは安値で売られており、算出方法は基本的に「営業権方式」と呼ばれ、「営業利益の3倍+純資産」で求められます。実は、営業権方式は企業価値が低く算出される傾向にある評価方法です。

一方、上場企業が企業を買収する際の値段は、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)といった経営指標に適正なマルチプル(倍率)を掛け合わせて算出する「マルチプル法」や、事業が生み出す将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算出する「DCF(Discounted Cash Flow)法」が用いられますが、前述した営業権方式と比べると企業価値が大きく算出されます。そのため、中小企業は上場企業に売却したほうが、売却価格は高くなります。

中小企業が大企業を相手にM&Aを考える場合、3つ目のメリットであるバリューアップを実施してから売却したほうが良い条件で売却することができます。その際、社員の優秀さ(DX人材を抱えている点)、ビジネスモデルや内部統制の再現性の高さ、コスト意識の高さ、会計の透明性の高さ、内部統制の構築度合いの高さは非常に重要になります。

中小企業が大企業に会社売却をする際に立ちはだかる壁

上記のように中小企業は大企業を相手に会社を売却したほうが高く売れますが、上場企業は、普通の中小企業をM&Aすることができません。なぜなら、以下2つのデューデリジェンスに中小企業が耐えられないからです。デューデリジェンスとは、M&A契約を締結する前に買収側が売却側の企業について徹底的な調査を行うことです。

ビジネスモデルのデューデリジェンス

1つ目は、ビジネスモデルのデューデリジェンスと呼ばれるもので売上の再現性に関する調査です。様々な項目がありますが、一例としては、経営層や一部のメンバー紐づいた売上が多く、M&Aした後にキーマンがいなくなると全然売上の見込みが立たなくならないかといった視点で調査が実施されます。

内部統制のデューデリジェンス

2つ目は、内部統制のデューデリジェンスと呼ばれるもので、管理会計などの内部統制においてしっかりとしたワークフローが組まれているかどうかを調査します。属人的だったり、社長の鶴の一声で決めていたりすると、内部統制のワークフローがしっかり整っていないとみなされます。

この2つができておらず、さらにシステムやITに長けたデジタル人材が社内にいない状況だと、上場企業は買収することができません。実はこういった問題を解決することが、社内のDX化を進めることになります。

事業承継を考える企業にとって、DX推進への投資は非常に投資対効果が高い

営業やマーケティングのDX化を進めることで、社員が誰でも売り上げを作れる状態を作り出すことができ、ビジネスモデルのデューデリジェンスにおいて高い評価を得ることができます。ERPのようなパッケージを導入することでバックオフィスの領域をしっかりとDX化し、上場企業が求める内部統制のデューデリジェンスにも耐えうるような、汎用的かつオープンなバックオフィスを作ることができます。またそういうパッケージの導入、運用ができる社員の存在は、M&A後のPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)においても非常に評価を受けることができる。PMIとは、買収後に統合効果を最大化するための統合プロセスを指します。

最近のトレンドでは、売却側がDX化が進んでいる場合、買収側がオペレーションを合わせるケースも見られます。この場合、買われた側の社員が、買収後もしっかりと重要なポストに就くことができます。また、上場企業に売却されることになった場合、社員に対して安定性や与信の引き上げ等の恩恵があります。

以上の観点から、事業承継を考える会社にとって、DX推進は最も重要な投資であるといえます。

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