営業DXと従来の営業の違いとは?営業DXが導入された組織に起こる変化を解説

経済産業省では、「『DX推進指標』とそのガイダンス(2019年)」においてDXを「本来、データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出していくことである、そのために、ビジネスモデルや企業文化などの変革が求められる」と述べています。

しかし、「DX」としながらも変革までには至らず、ITを用いた業務効率化にとどまっているケースも少なくないようです。そこで、営業DXと従来の営業の違いや組織に与える変化、GLナビゲーションが導入した営業DXの手法と成果をご紹介します。


目次

海外と日本の「営業ノウハウ」の考え方の違い

DXの解説の前に、まず海外と日本の営業の違いについて解説します。
日本で「トップセールス」というと、一般的に「伝説の営業」と呼ばれるような方を指し、トップセールスが編み出した“秘伝のたれ”のような営業ナレッジを組織に伝播させていくことを重視されてきました。

しかし海外の営業はその真逆で、「経験が浅い従業員を即戦力化する」「ツールやデータを活用する」ことを重視し、営業ナレッジに落とし込んですぐにアクセスできるようにしています。海外では、日本のような自社で編み出した独自の営業ノウハウよりも、先進的な企業のやり方を真似して最適化することを優先しています。

なぜ海外の営業の多くが進んだ企業のやり方を模倣しているかというと、海外は従業員が辞めることを前提として組織が作られているからです。企業独自のオペレーションやシステムを構築してしまうと、営業のオンボーディングがされないのです。

DXを実現すると、営業の何が変わるのか?

DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略です。デジタルの対義語がアナログだとすれば、アナログは「分析できない」という違いがあります。「デジタル=分析可能」と定義すると、デジタルトランスフォーメーションとは、「分析することで変革する」と言えるでしょう。営業DXが営業に及ぼす2つの変化を解説します。

営業という職種の「定義」が変わる

代表的な例として、紙で行っていた業務をデジタル化するといった業務効率化をDXと捉えるケースがありますが、これはトランスフォームではなく便利になっただけです。営業のDXを実現するということは、業務や判断軸、行動が変わります。営業の定義は「売る仕事」ではなく、自身の行動や顧客の反応がどのように数字に表れるかを解き明かすという、「データを判断する仕事」に変わるということです。

営業の定義が変われば、業務内容も変わります。従来の営業は、リードを獲得し見込み顧客を作ることから始まり、顧客に提案して受注しフォローするところまでを一人の営業が担っていました。しかし営業のプロセスは役割分担が進み、マーケティング部門がリードや見込み顧客を作り、インサイドセールスが営業にパスしてクロージングを行い、カスタマーサクセスが顧客をフォローしています。こうした職種の在り方の変化が「トランスフォーム」と呼べるものです。

シナリオではなく「局面理解」が進む

従来の営業は事前準備の段階で仮説を立て、「このお客様はこういう反応をしたので、この商品を提案しよう」というシナリオに乗せて提案していました。しかし縦割りで業務の役割分担が進んだ組織では、一人の顧客に焦点を当ててシナリオを作るのではなく、「こうした反応をするお客様が過去にどのくらいいて、どのような属性が多いのか」「この属性を持つお客様は、なぜこのような判断をする傾向があるのか」と、データに基づいてパーソナライズする「局面理解」が進みます。

実はこの「局面理解」は、マーケティングでは一般的な考え方です。営業は1to1で顧客との局面をどのように打開して次に進めるかを重視しますが、マーケティングは相手を塊にして考えます。データに基づいてカテゴライズし、「なぜこうなるのか」に重きを置いて判断するのが営業DXの考え方です。

GLナビゲーションが実践した営業DXの具体的な手法と成果

営業DXを導入すると、どのような成果や変化があるのでしょうか。そこでGLナビゲーションが追求した、経験の浅い人であっても即戦力化する営業DXメソッドと成果についてご紹介します。

SFAとMAなど複数のツールを組み合わせスコアリング化

GLナビゲーションでは、マーケティングオートメーションのMarketoを導入し、SalesforceのSFAと連携させています。Salesforceを営業活動のデータ基盤として、全ての行動データを入れて顧客のフェーズ管理を行っています。マーケティングオートメーションを使えば、誰がどのページをどの程度見ているのかをスコアリングできるので、傾向を掴むことができます。さらに、Sales Engagement ツールのOutreachを使うと、顧客のフェーズを細分化して営業のアプローチ方法をプログラム化できます。具体的に言うと、特定フェーズの顧客に対して自動でメールを送信されると、Salesforceで架電のアプローチが立ち上がります。もし電話しても通話できなかったら、さらに自動でメールが送信され、反応を得られるまで自動化されたプログラムに従って営業活動を続けます。従来であれば、顧客に対して営業が独自に判断してメールや架電をしていましたが、プログラムに従って行動すれば成果を上げることができます。実際にGLナビゲーションでは、新卒1年目の営業全員が1億円以上の売上を達成することができました。

こうした高い実績をあげられるのは、顧客に対して細かくデータ分析していることが重要で、我々は1顧客に対して700近いスコアリング項目を設けています。項目数は膨大ですが、Webのトラッキングで様々なデータを取得できるので、100程度は自動でスコアリングされています。

「型化」によって、営業がマーケティングの動きに変わる

さらに我々は「ノンテリトリー性」を設けており、3日間顧客にアプローチしなかったら、他の営業がアプローチしていいというルールを設けています。システムで顧客のフェーズやコンバージョンしやすい顧客群を確認できるので、ホットな顧客には常にだれかがアプローチしている状態です。徹底してデータ化し分析しながら営業活動をしています。

例えば、10~11時が新規架電、11~12時がアポイント調整や見込み顧客へのフォローアップなど、全て型になっています。型に乗って動くことに対して、「営業力が育たない」「主体性がない」といった印象があるかもしれませんが、データを分析してアクション方法を考えるという、マーケティングの動きに変わるので従来の営業とは異なるものです。

営業DXが導入された組織に起こる変化

営業DXが導入されると、組織や働き方にはどのような変化が訪れるのでしょうか。代表的な3つの変化を解説します。

営業の進捗共有が変わる

まず、現状の共有が不要になります。定例のミーティングでは、行動履歴や営業見込み、営業の進捗などをデータで確認できるので、画面を見ながら会話をします。営業の進捗状況や件数などを確認する必要がないので、可視化されたデータを元にもっと掘り下げた会話になります。営業が全てのプロセスを一人で行っている組織では、情報共有のコストが高くなります。情報がデータ化されてオープンになっているので、役割分担も進むでしょう。

営業の立ち上がりが早い

DX化されている営業組織は役割分担や型化が進んでいるので、1人前になるまでの時間が短縮できます。GLナビゲーションでは、新卒の社員が2週間程度の研修を受けて、営業として独り立ちできるようになった実績もあります。

マネジメントスタイルが変わる

DX化されていない営業組織では、どのように営業活動しているかをマネジャーが見えないため、結果とモチベーションのマネジメントになる傾向があります。「なぜ売れないのか」「いくら売ったのか」という結果マネジメントや「やる気を出せ」「本気なのか?」といったモチベーションマネジメントが主流になりがちです。しかし、DX化されると営業プロセスも可視化されるため、マネジャーのマネジメントスタイルが変化します。営業DX組織では、数字の見方やツールの使い方などのスキルトレーニングと、プロセスマネジメントが中心の伴走型マネジャーになります。フィードバックは数字やファクトをベースにして、「ハイパフォーマーに比べて獲得率が○%違うけれど原因は何だと思う?」「現在、ローパフォーマーの行動傾向に近くなっているから、このように変えたらいいんじゃないかな」など、マイクロマネジメントに近くなります。マネジメントにブレがないので、メンバーの納得度も高くなり、データに裏打ちされているので成果も出やすいでしょう。

営業DXを実現するための3つのポイント

従来型の営業スタイルに慣れている組織では、営業DXの導入が進まない可能性があります。そこで、営業DXを実現するために意識しておきたい3つのポイントをご紹介します。

営業DXが起こす変化を見せる

DXが実現しない組織の特徴として、「それって意味あるの?」「自分たちにできないのでは?」という否定的な声が上がることがあります。この場合、実際に営業DXの効果が以下にすごいのかを実践して見せるということが重要になります。GLナビゲーションのコンサルティングサービスでは、コンサルティングだけでなく、我々が率先してデータを分析しながら業務を実践する営業アウトソーシングも実施しています。実際に成果を出すことによって、メリットを理解していただくようにしています。

「難しくない」ということを理解してもらう

人によってはデジタルツールに対して苦手意識を持つケースもあります。「デジタルツールはプログラマしか使えないブラックボックス」という印象があるかもしれませんが、最近はコーディングを必要としないノーコードツールが主流で、以前よりも難解なものではありません。過去の印象で苦手意識を持つ人に難しくないことを理解してもらう工夫が必要です。GLナビゲーションではSalesforce導入時、構築経験が無いスタッフが2ヶ月で完成させています。その後の運用改善も全てインハウスで実施しております。

真似すればいい状態に標準化する

デジタルツールだけでなく、営業活動自体も「真似すればいい」と思ってもらうことが重要です。営業活動を標準化し、真似してもらうことで変化に対する抵抗感が薄くなります。実際に我々の営業スタイルも、一部はオリジナルですが多くのグローバル企業で標準化されたプロセスを採用しています。敷居の低さも、営業DXを実現するためのポイントのひとつと言えるでしょう。

外部アドバイザーを交えて客観性を担保することが重要

営業DXを推進する際の注意点は、「自社のみで進めない」ということです。冒頭で、海外の企業は従業員が退職することを前提として、先進的な企業のやり方を模倣しているとお伝えしました。日本の企業は海外ほど人材の流動性が高くないので、営業DXを推進しても、時間が経つうちにオリジナリティを発揮して独自性が深まってしまう傾向があります。本来実現したかった「経験の有無にかかわらず、従業員を即戦力化する」という目的とは真逆の方向に進んでしまうのです。

そのため、営業DXを推進する際は、外部アドバイザーなどを交えて客観性を担保しながら推進することが重要です。

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