企業のDXでよくある「5つの間違い」とは? DXがうまくいかない理由を解説 

生産性の向上や経済成長を実現するために、多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が検討されています。しかし、業務システムを導入しただけで変革とまでは言えなかったり、導入自体がうまくいかなかったりするケースも少なくありません。

では、うまくいかないDXに共通点はあるのでしょうか。そこで今回は、企業がDXを導入する際によくある間違いについて解説します。

●目次

「うまくいっているDX」と「うまくいかないDX」の違い

多くの企業でDXが推進されていますが、「うまくいっているDX」とは、売上や利益が増えて、従業員も成長している状態です。一方、うまくいかずに悪循環になっているDXとは、ツール選定や開発方法を誤ってしまい、外注コストで利益が圧迫されたまま売上も伸びていない状態です。売上が伸びないので従業員もやる気が出ず、定着率が悪化するリスクもあるでしょう。

企業のDXの明暗を分けるポイントにはいくつかの共通点がありますが、特に「うまくいかないDX」には傾向があるので、代表的なケースをご紹介します。もし当てはまる項目がある場合は、DXの成果が改善する可能性があるので、ぜひチェックしてみましょう。

【間違い】業界や企業規模など、自社に類似する事例を参考にする

DXを導入する際に最初にやるべきなのは、他社の事例を調べて自社との差を実感することです。事例を確認することで、自分たちの課題やあるべき姿も明らかになります。

しかし、事例を探す際に、業界や企業規模など自社と類似する事例を参考にしてしまうケースがあります。自社と似ている企業の事例ばかり調べていると、ベストではないやり方を実行していた場合に、それを真似てしまうことになります。

以前は、スクラッチでのシステム構築が一般的でした。システム構築に多大なコストがかかるため、大手企業や最先端企業の事例が参考にならないケースもありましたが、SaaSの登場によって、現在では大企業や先端企業と同じシステムをすぐに使うことができます。

そのため、自社に類似する事例を探しても参考になるとは限りません。事例を探す際は、自社の類似事例を探すのではなく、うまくいっている事例を探すことが重要です。大切なことは、一番進んでいる企業の事例を学び、自社に置き換えるとどうなるかを考えることです。

【間違い】外注を前提にしており、技術やツールへの理解がない

多くの企業が、システム構築を行う場合は情報システム部門が企画し、SIerやベンダーに構築を依頼しています。DXもその流れで、外注することを前提に企画するケースが多いようです。

しかし、外注が前提になると、企画するDX担当者が開発プロセスをイメージしないまま、「やりたいことを技術の力で実現したい」という思いが先行してしまうケースが少なくありません。DXへの期待値は高いのに技術との紐づけができていないために、構築段階で無理が生じます。SIerやベンダーの要件定義が難航し、時間やコストが膨らんでしまいます。

【間違い】いつも依頼しているSIerやベンダーに相談する

いつも依頼しているSIerやベンダーにDXを相談しているケースもよく目にします。自社のことを深く理解しているパートナーに依頼したくなる気持ちは分かりますが、懇意にしている企業がDXのベストプラクティスを知っているとは限りません。

システム構築プロセスには「Fit&Gap(フィットアンドギャップ)」という考え方があり、自社に適合する部分と乖離する部分の分析をする必要があります。しかし、Fit&Gap

を行うには高い専門性が欠かせません。そこで、DXがうまくいく企業の多くは、システム構築とコンサルティングを使い分けています。システム構築フェーズは構築が得意なSIerやベンダーに依頼し、企画フェーズは実行イメージを持っているコンサルタントに任せます。

なお、コンサルタントはコストがかかるイメージがあるかもしれませんが、コンサルタントに任せることで、システム構築のコストを最小限にできる可能性があります。例えばSalesforceの場合は、機能を熟知するコンサルタントが企画すると、業務とセットにして標準機能で収まるシステム戦略を立てます。標準機能の範囲であれば開発コストは最小限に抑えられるし、構築自体が簡単なので内製化も可能です。

一方、SIerやベンダーは、顧客がやりたいことを実現しようとして独創的なプランを立てるケースが多く、標準機能で収まらなくなってしまいます。カスタマイズすることでシステムが複雑化し、開発期間やコストも膨らんでしまうでしょう。

【間違い】現場からボトムアップで課題を吸い上げる

現場の課題をボトムアップで吸い上げるケースがありますが、現場起点だとDXはうまくいきません。

これまでの歴史で例えると、たくさんの荷物を運ぼうとする場合、荷物を運ぶ馬に乗せる鞍や鞭を工夫する方法が考えられました。でもDXとは、「馬」で何とかするのではなく「鉄道を走らせる」という発想です。馬から鉄道に運搬手段が変わるので、関わる人や業務も変わるのがDXです。

自分たちのやり方を効率化するために目の前のシステムを変えるのではなく、考え方や仕事の進め方自体を変えるという姿勢が必要です。

【間違い】価格や機能重視でツールを選ぶ

DXのためのツール選定の基準として、「手頃な価格」を重視する企業も少なくありません。もちろん、費用対効果を見た上で安いツールを利用するのは問題ありませんが、利益を考えないままツールだけを入れた場合、ROIが低くなってしまう可能性があります。DXのためのツール選定は、費用対効果やROIの観点で評価することが重要です。

また、現場のニーズに応じて「機能重視」でツールを選ぶのも、DXの観点でうまくいかない可能性があります。例えばSalesforceは、現場が変わるためのツールなので、仕事の進め方を変えようとしていない人には使いにくいツールだと感じるようです。

現場の課題に応じた使いやすい機能ばかりを選んでいると、仕事の進め方自体が変わりません。DXを実現したい場合は、機能を重視しすぎない方が良いでしょう。

「うちは他と違う」という言葉がDXを失敗させ、若手は離職する

DXが進まない企業でよく聞かれるのは、「うちは他と違うから」という言葉です。もちろん企業によって事情はありますが、独自性を変えようとせず自社が求めるやり方を探そうとすると、DXは一向に進みません。

システム導入で注目されている言葉に、「Fit to standard(フィット トゥ スタンダード)」があります。これは、システムの追加開発を行わずに、標準機能に合わせて業務内容を変えてベストプラクティスを実現するという考え方。「うちは他と違うから」というスタンスは、Fit to standardとは真逆の発想です。

また、「うちは他と違うから」と言えば言うほど、若手世代が「そんな特殊な環境に身を置いていいのかな」「独自スキルばかり身について社会で通用しなくなるのでは」と不安になります。Z世代と呼ばれる若年層は、情報社会特有のタイムパフォーマンス意識が強い上に、親世代が雇用不安や早期退職に直面しているケースも多く、キャリアに対する危機意識も強い傾向があります。

そのため、彼らが成長実感を得られる環境を整えれば、長く働いてもらえます。成長して一人当たりの生産性を高めていけば、売上が増えるため報酬を上げることもできるでしょう。変化を受け入れて経験・スキルを身につけられる環境を整え、高い報酬を支払うというサイクルをコミットメントしないと、従業員も定着せず持続的な成長は期待できません。

最後に

難しく考えている方が多いのですが、DXは簡単です。自分たちで試行錯誤しなくても、一番うまくいっている企業のやり方を自社に適用し、仕事のやり方を変えればいいだけです。システム構築もコンサルタントに依頼すれば、カスタマイズせずにベストプラクティスを実現できるでしょう。

一方で、DXを実現するためには学習が必要です。技術やツールへの理解を深め、仕事の進め方を変える姿勢がないとDXの実現は難しいでしょう。ただ、変わることはそれほど難しいことではありません。学習を通じて新しいことをキャッチアップするたびに、「このやり方が良さそうだから取り入れてみよう」「うまくいっている企業のやり方を参考にしよう」と、自然に意識が変わっていきます。「変わること」を難しく考えずに、勉強して情報をキャッチアップすることで、DXの納得度や実行イメージが明確になるでしょう。

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